試験・検査の外注が必要になった。でも、
「どこに依頼したらいいか分からない~」
という方のために、試験・検査機関の実務経験者がおすすめの選び方を解説します!
まずはこれを確認
- 登録検査機関でなければ実施できない内容ではないか。
- 取引先からの指定はないか。
順番に見ていきましょう。
1.登録検査機関でなければ実施できない内容ではないか。
まずは、「登録検査機関」について説明しますね。
経済産業省のウェブサイト 電気用品安全法 のページでは以下のように説明されています。
登録検査機関とは、中立公平であり、その能力が国際規格(ISO/IEC 17065)に適合すると認められ、国の登録を受けた検査機関です。
経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/cab.html)
届出事業者が特定電気用品を製造・輸入しようとする場合、その特定電気用品について、登録検査機関による適合性検査を受ける必要があります。
また、厚生労働省のウェブサイト 食品衛生法上の登録検査機関について では以下のように説明されています。
登録検査機関とは、政府の代行機関として、業務規程の認可を受けた製品検査(登録検査機関一覧をご参照ください)を行うことができる検査機関のことです。
厚生労働省ウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/jigyousya/kikan/index.html)
登録検査機関には、業務として、認可を受けた製品検査以外の検査も行っている検査機関も多くあります。自主的に検査を行う目的で依頼する際には、認可を受けた製品検査と同等の信頼性が確保されているかどうかなど、利用目的に沿うかどうかについて確認した上で依頼しましょう。
登録検査機関を簡単にまとめると、「特定の法律で定められた検査の実施を公的に認められた機関」です。
逆を言うと、特定の法律で定められた検査は、登録検査機関でなければできません。(※自主的な検査であれば可能なところもあります。)
まずは、「登録検査機関でなければ実施できない内容ではないか。」を確認して、登録検査機関の中から選ぶのか、それ以外からも選べるのかを判断しましょう。
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2.取引先からの指定はないか。
取引先から試験・検査データの提出を求められている場合、実施機関を指定されるケースもあります。
この場合、指定された機関以外のデータでは商談が進まない可能性もありますので、事前にしっかりと確認しておきましょう。
任意に試験・検査機関を選べる場合
上記のような縛りがなく、自身で任意の試験・検査機関を選択できる場合は、以下の点に注目してみると良いマッチングが生まれやすいと思います。
- 得意ジャンルで選ぶ
- 料金で選ぶ
- 納期で選ぶ
- 信頼性で選ぶ
順番に見ていきましょう。
1.得意ジャンルで選ぶ
各機関はその設立背景などから得意ジャンルが明確化されています。
例えば、電気用品、建材、ゴム、プラスチック、食品、化学物質、化粧品、衣料品、土木材料など、多数のジャンルが存在します。
得意ジャンルで選ぶメリットとしては、次項の内容にも関わるのですが、やはり得意なものは基本的には安く早くできますし、知識も豊富なので安心感がありますよね。
得意分野の調べ方は様々ありますが、まずは機関の名称が物語っている場合が多いです。
もっと詳しく調査したい方は、気になる機関のホームページを見るといいでしょう。特におすすめなのは、沿革や定款を見ることです。設立背景や事業目的を知れば、自ずと得意ジャンルが見えてきます。
2.料金で選ぶ
試験や検査は、同一の試料を同一の方法で行えば、基本的には同等の結果が得られるものです。同じ結果が得られるのならとにかく費用を安く抑えたいと考える方も多いのではないでしょうか。
試験・検査費用ですが、残念ながら多くの機関では公開されていません。費用を抑えたい場合は、いくつかの機関に相見積もりを取ることをおすすめします。
3.納期で選ぶ
納品まで時間がないからとにかく早く結果が欲しいと考える方もいるでしょう。多くの機関では特急対応をしているケースもあります。その場合、割増料金とはなりますが、ここは何を優先するかです。今は何を優先すべきか考えて検討するのが良いでしょう。
納期についても各機関に問い合わせが必要になります。繁忙期などは特急対応ができない場合もありますので必ず確認しましょう。
注意点として、試験や検査にはどうしても短縮できない時間というものが存在します。それは、試験そのものにかかる時間であったり、試験前の試料の調整にかかる時間であったりします。気を付けていただきたいのは、この範囲を超えて短い納期で対応可能としている場合です。規格通りの方法から逸脱している可能性がありますのでご注意ください。
このようなことに巻き込まれないためにも、自身でもJISなどを読み、試験内容を把握しておく必要がありますね。
4.信頼性で選ぶ
試験・検査機関の信頼性を客観的に判断するための指標として、下記の2点が挙げられます。
- ISO 9001
- JNLA
順番に見ていきましょう。
ISO 9001
ISO 9001は、商品・サービスの品質を継続的に向上させるための組織指揮・管理に関する要求内容を規定しています。日本産業標準調査会ウェブサイトでは以下のように説明されています。
ISO 9001とは、組織が品質マネジメントシステム(QMS: Quality Management System)を確立し、文書化し、実施し、かつ、維持すること。また、その品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善するために要求される規格です。具体的には、品質マネジメントシステムの有効性を改善するため、プロセスアプローチを採用し、組織内において、プロセスを明確にし、その相互関係を把握し、運営管理することとあわせて、一連のプロセスをシステムとして適用します。
日本産業標準調査会ウェブサイト (https://www.jisc.go.jp/mss/qms-9000.html)
ISO 9001は試験・検査機関以外でも多くの企業が取得していますよね。企業同士で新規の取引を検討する際、ISO 9001を取得している企業かどうか、というのも重要な判断材料になることもあります。
試験・検査機関についても例外ではなく、取引の判断材料としてISO 9001の取得を確認すると良いでしょう。
JNLA
JNLAという文字列は初めて見る方も多いのではないでしょうか。JNLAについて、日本産業標準調査会ウェブサイトでは以下のように説明されています。
JNLA制度とは、産業標準化法に基づき、国際的な試験所に対する基準であるISO/IEC17025(JIS Q17025 試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項)に適合する試験事業者を登録し、この登録試験事業者は、該当するJIS(注)に基づく試験を行ったとき、その証明書にJNLAの標章を付すことができる制度であり、試験成績書の信頼性の確保に寄与します。
登録は、試験事業者の試験所ごとに行われます。
審査は、試験事業者の試験所の管理体制、要員、試験機器、試験方法等が適切であるかどうかについて、該当JISごとに審査し、全ての基準に適合することによって登録されます。
登録試験事業者は、少なくとも4年に1度の更新審査に加えて、必要に応じて立入検査が行われます。
なお、経済産業大臣が主務大臣の場合、JNLA制度は独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が、審査、登録等を実施しています。
注)主務大臣が経済産業大臣の場合、登録の区分は、類似の JISを1つの区分としています。
日本産業標準調査会ウェブサイト (https://www.jisc.go.jp/newjis/cap_index.html)
簡単に要約すると、試験・検査機関や校正機関が国際的に求められる能力(技術的な要素を含む)を有しているかを審査・登録する制度です。
そして、この審査・登録は、経済産業省所管の独立行政法人である「製品評価技術基盤機構(NITE)」が行っています。(※経済産業大臣が主務大臣の場合)
JNLAの登録試験事業者は経済産業省所管の機関による審査を適合していることになりますから、信頼性においてこれを上回るものはそう多くないのではないでしょうか。
このように、JNLAの登録の有無は信頼性の観点で、依頼先を選ぶ際には重要な要素であると言えます。
注意点として、JNLAの審査・登録は該当JISごとに行われるという点があります。
例えば、”A” という試験においてJNLAの登録試験事業者となった場合、確かにJNLAの登録試験事業者ではありますが、”B” という試験については登録されていないことがある、ということがあります。
“A” という試験を依頼する分には問題ないですが、”B” という試験を依頼する時にはJNLAによる信頼性は保証されません。
より慎重に依頼先を探すのであれば、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)のウェブサイトから、登録試験事業者一覧を検索し、どの機関がどの試験で登録されているのかチェックすると良いでしょう。
それでも選べない方へ
面白い例え話として、この業界はラーメン屋に例えられることがあります。
ラーメン屋さんにはラーメンのレシピがあります。
極論ですが、同じレシピがあれば材料と機材さえ揃えてしまえば、同じ味のラーメンができてしまいます。
もし、世の中に同じ味のラーメン屋さんしか存在しなかったら、君はどうやって食べに行くお店を決めるかな?
やっぱり家に近いお店かな!あ、でもお給料日前だったら安いところがいいかも。。。
並ばなくていいところもいいな~、、、店員さんが高圧的じゃないところもいいかも。。。
「どこに行っても同じ味ならどこに行っても変わらない」と考えがちですが、実際はこんな風に悩んでしまいますよね?
検査機関の話に戻しましょう。
ラーメン屋さんにおけるレシピは、検査機関にとっての試験規格(JISやISOなど)に該当します。つまり、同じ試料を同じ規格で試験すれば、基本的にはどこに依頼しても同等の試験結果が出ます。
でも、「どこに依頼しても同じ結果になるならどこに依頼しても変わらない。」訳ではありません。ラーメン屋さんの例え話と同じように、下記のような内容で悩んでしまいますよね?
- 近くに事業所があり、気軽に相談に行けるか?
- 料金が安いか?
- 納期が早いか?
- 担当者の対応が良いか?
これらの悩みを一発で解決する方法をお教えします。
直接聞いてしまいましょう。
特におすすめなのが、各機関のホームページにあるお問い合わせフォームからの問い合わせです。
理由は下記の通りです。
- 規格番号や納期、料金等の数字を正確に伝えるためには口頭よりもテキストによる伝達が適している。
- 「今、手が空いている人」ではなく「適任者」が対応してくれる。
- 伝える側も受け取る側も冷静に考えることができる。
- 個人レベルでは把握していないことでも、組織全体としては知見がある可能性がある。
候補が複数ある場合はそれぞれに問い合わせしてみて比較すると、より自分たちの希望に合った検査機関を選べると思いますよ!
最後に
本記事では、試験・検査を外注する際の依頼先の選び方について、解説してきました。
色々と書いてきましたが大事なのは、依頼主であるあなた(会社、部署)が何を重要視しているかです。
あなたにぴったりの試験・検査機関が見つかるといいですね!
「キーワード欄」には具体的な「試験名」「規格名」「訴求文言」、「タグ欄」からは「アイテム名」「性能の種類」を選択してください!
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今日もお仕事お疲れ様です!
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