繊維製品の品質管理において頻出する「染色堅ろう度」の1種に摩擦堅ろう度があります。
摩擦堅ろう度とは
簡単に言うと、摩擦に対する染色の耐久性です。
ここでの「染色の耐久性」とは以下の点を指します。
- 試料となる染色物から他のものへの移染のしにくさ(色移り等)
摩擦堅ろう度試験について
摩擦堅ろう度試験はJIS(日本産業規格)でその試験方法が定められています。
規格番号と規格名称を下記に示します。
規格番号:JIS L 0849
規格名称:摩擦に対する染色堅ろう度試験方法
また、JIS L 0849では試験の原理について以下のように示しています。
摩擦試験機を用いて試験片を摩擦用白綿布で摩擦し, 摩擦用白綿布の着色の程度を汚染用グレースケールと比較するか(視感法), 又は計器を用いてその堅ろう度を判定する(計器法)。
JIS L 0849 4 原理 より引用
染色堅ろう度試験の多くは、「試料となる染色物自身の変色のしにくさ(色褪せ等)」と「試料となる染色物から他のものへの移染のしにくさ(色移り等)」の両方、もしくは前者のみを評価します。
しかし、摩擦堅ろう度は後者の「試料となる染色物から他のものへの移染のしにくさ(色移り等)」のみを評価する試験になります。
試験片(堅ろう度を確認したい試料)と摩擦用白布を摩擦試験機に取り付けて、機械的に擦り合わせます。
摩擦操作後、摩擦用白布に移染した色の度合いを確認することで、他のものへの移染のしにくさ(色移り等)を評価することができます。
摩擦堅ろう度試験には乾燥試験と湿潤試験の2種類が存在します。
基本的には湿潤試験の方が色移りが激しいですが、逆パターンもあり得るので驚かないようにしましょう。
- 乾燥試験:摩擦用白布は、試験を実施する際と同じ温度・湿度の環境下に一定時間放置したものを用います。
- 湿潤試験:摩擦用白布は、白布の重量と同等の水を含ませたものを用います。
また、試験方法にはⅠ形とⅡ形があり、諸条件が異なりますがおおよその原理は同じです。
試験のイメージは下図をご覧ください。
摩擦処理後、摩擦用白布を取り出し、汚染の級数を判定します。
- 汚染=試料となる染色物から他のものへの移染のしにくさ(色移り等)
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試験結果は5級から1級まで9段階の級数で表されます。4級と5級の間の級数は「4-5級」と表記され「よんごきゅう」と呼ぶことが多いです。「3-4級」は「さんよんきゅう」、「2-3級」は「にさんきゅう」、「1-2級」は「いちにきゅう」と呼ぶ人が多いです。
また、級数の数字が大きい方が堅ろう度が良い結果といえます。
摩擦堅ろう度試験を実施するメリット
摩擦堅ろう度は前述したとおり、摩擦に対する染色の耐久性を表しています。
そのため、摩擦堅ろう度が悪いものは、製品が他のものと擦れることで色移りが生じてしまい、消費者クレームの原因になることがあります。
例えば、デニムのパンツを履いた状態で、白い革の高級ソファーに座ったとき、擦れによってデニムの青が色移りしてしまい、クレームに繋がる可能性があります。
事前に試験をしておくことで、このようなクレームを未然に防ぐことができるのが摩擦堅ろう度試験を実施するメリットの一つであり、試験を実施する目的であると考えられます。
摩擦堅ろう度試験を実施している検査機関
摩擦堅ろう度試験を実施している代表的な検査機関は下記となります。
- 一般財団法人 カケンテストセンター
- 一般財団法人 ボーケン品質評価機構
- 一般財団法人 ニッセンケン品質評価センター
- 一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター
- 一般財団法人 ケケン試験認証センター
- 一般財団法人 化学物質評価研究機構
まとめ
- 摩擦堅ろう度は、簡単にいうと摩擦に対する染色の耐久性。
- 摩擦堅ろう度試験では、汚染のみを評価する。
- 摩擦堅ろう度試験を実施しておくことで、製品が他のものと擦れることで色移りが生じてしまい、消費者クレームに繋がることを未然に防ぐことができる。
乾燥条件での堅ろう度が悪いものはクレームに繋がりやすいので要注意です!
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