
染色堅ろう度の判定結果と言えば、
判定者の個人差やばらつきが大きいイメージがあるよ。

まあ、確かにそういう一面もあるんだけど、
誤った解釈をしている人も多いから、真実を教えるよ。

染色堅ろう度における判定とは
まず、染色堅ろう度試験とは、繊維製品などにおける染色物の色の耐久性を調べる試験のことです。
- 耐光堅ろう度(光に対する色の耐久性)
- 摩擦堅ろう度(摩擦・擦れに対する色の耐久性)
- 洗濯堅ろう度(洗濯に対する色の耐久性)
- 汗堅ろう度(汗に対する色の耐久性)
- ドライクリーニング堅ろう度(ドライクリーニングに対する色の耐久性)
- 昇華堅ろう度(熱に対する色の耐久性)
また、「色の耐久性」を評価するために「変退色」と「汚染」という用語が使われます。
【変退色】試料となる染色物自身の変色のしにくさ(色褪せ等)
【汚染】試料となる染色物から他のものへの移染のしにくさ(色移り等)
判定とは、試験処理を終えた試料の「変退色」「汚染」の程度を数値化する作業のことです。
JISでは、測色計などによる「計器法」と、目視による「視感法」が規定されており、現在では「視感法」での判定が主流となっています。

中国人スタッフに誤解なく伝えるのが一番難しい・・・
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判定の誤解と真実
染色堅ろう度試験の判定は、目視による「視感法」で行われることが多く、それが原因で様々な誤解が生じています。
ここでは、よく誤解される内容とその真実について解説します。
- 目視なんだから判定する人による結果のばらつきが大きい(個人差が大きい)。
- 判定結果は上下両側に半階級はばらつくもの。
- 半階級くらいであれば交渉で試験結果を変えられる。
- 正しい方法で行えば個人差は生じにくい。経験的に熟練者間では半階級には納まる印象。
- 半階級のばらつきが生じやすいのは事実。ただし、ばらつきは片側のみ。
- 交渉によって得られた結果は試験結果ではなく交渉結果。試験結果が必要な場合は再試験を。
以下、解説です。
1. JISなどの規格では、人間の目で見て等級付けをする試験方法であるため、個人差が小さくなるように設計されています。また、判定員は訓練を受けたうえで判定を行い、同一の試料に対して複数人の判定員がチェックしています。
2. 染色堅ろう度の判定は、定規を使った線の長さの測り方に似ている部分があります。
例えば図1の緑色の線の場合、何cmと読み取れるでしょうか? ただし、小数点以下1桁まで読み取ることとします。

「2.0cm」「2.5cm」の2通りの読み方ができると思います。それこそ人によってどちらで読み取るかは分かれそうですよね。
染色堅ろう度の判定もこれと同じです。基準となる目盛(実際にはグレースケール)の間に存在する場合、その上下のどちらかを選択しなければなりません。
これが、半階級のばらつきやすさの正体です。
では、ばらつきの範囲はどうでしょうか?図1を例に考えてみます。
仮に「2.5cm」を測定結果とした場合、ばらつきの範囲は「短い側に0.5cm」です。一方で「2.0cm」を測定結果とした場合、ばらつきの範囲は「長い側に0.5cm」です。ばらつきは片側に偏っていることがわかりますね。


3. 解説するまでもないのですが、交渉で変わってしまうような試験結果であるならば、そもそも試験なんかする必要がありません。
交渉するべき相手は、検査機関ではなく「取引先」です。どうしても要求された数字が必要な場合は、改良後に再試験をしましょう。
まとめ
染色堅ろう度の判定におけるばらつきについて、よく誤解される内容を解説しました。
- 正しい方法で行えば個人差は生じにくい。経験的に熟練者間では半階級には納まる印象。
- 半階級のばらつきが生じやすいのは事実。ただし、ばらつきは片側のみ。
- 交渉によって得られた結果は試験結果ではなく交渉結果。試験結果が必要な場合は再試験を。
今回は「判定」に限定して解説しましたが、試験結果がばらつく要素は他にも多く存在します。
試験結果にある程度のばらつきが生じるのは当然です。正しく理解して、慌てることのないようにしましょう。

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