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水堅ろう度試験とは【解説】(※動画あり)

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繊維製品の品質管理において頻出する「染色堅ろう度」の1種に水堅ろう度があります。

水堅ろう度とは

簡単に言うと、水に対する染色の耐久性です。

ここでの「染色の耐久性」とは以下の2点を指します。

  • 試料となる染色物自身の変色のしにくさ(色褪せ等)
  • 試料となる染色物から他のものへの移染のしにくさ(色移り等)

水堅ろう度試験について

水堅ろう度試験はJIS(日本産業規格)でその試験方法が定められています。

規格番号と規格名称を下記に示します。

規格番号:JIS L 0864

規格名称:水に対する染色堅ろう度試験方法

また、JIS L 0864では試験の要旨について以下のように示しています。

この試験は,複合試験片を規定の方法に基づいて水で処理し,次いで汗試験機を用いて加圧下で処理した後,乾燥し,試験片の変退色及び添付白布の汚染の程度を,それぞれ変退色用グレースケール及び汚染用グレースケールと比較するか,計器によって変退色等級及び汚染等級を求めて,その堅ろう度を判定する方法である。

JIS L 0864 3 要旨 より引用

複合試験片とは試験片となる染色物(水堅ろう度を調べたい試料)に添付白布と呼ばれる試験布を縫い付けたものです。

添付白布を付けることで、他のものへの移染のしにくさ(色移り等)を評価することができます。

複合試験片を試験用の水に30分間浸漬します。

この複合試験片をプラスチック板で挟んだ状態にして、汗試験機と呼ばれる保持具に取り付けます。

この時、試料に12.5kPa(キロパスカル)の圧力がかかるように調整します。

試験片を挟んだ汗試験機(保持具)を、37℃に設定した恒温器(温度を一定に保つことができる装置)に投入し、4時間放置します。

その後、複合試験片を取り出し乾燥させた後、変退色と汚染の級数を判定します。

  • 変退色=試料となる染色物自身の変色のしにくさ(色褪せ等)
  • 汚染=試料となる染色物から他のものへの移染のしにくさ(色移り等)

中国人スタッフに誤解なく伝えるのが一番難しい・・・

そんな方は、ぜひこちらの記事をご覧ください!

試験結果は5級から1級まで9段階の級数で表されます。4級と5級の間の級数は「4-5級」と表記され「よんごきゅう」と呼ぶことが多いです。「3-4級」は「さんよんきゅう」、「2-3級」は「にさんきゅう」、「1-2級」は「いちにきゅう」と呼ぶ人が多いです。

また、変退色、汚染ともに級数の数字が大きい方が堅ろう度が良い結果といえます。

変退色の判定イメージ

変退色の級数は、元の色からどれだけ遠ざかったかをグレースケールというものを用いて判定します。

本来は試験用のグレースケールを使いますが、分かりやすくするために下図の変退色のバーを使って説明します。

元々の色はバーの左端の濃い黒です。試験をすることで、試料の色に変化が生じたとき、その色はこのバーのどのあたりの色が近いかを見て、級数を判定します。

汚染の判定イメージ

汚染の級数は、元の添付白布の白色にどれだけ色が移ったかをグレースケールというものを用いて判定します。

本来は試験用のグレースケールを使いますが、分かりやすくするために下図の汚染のバーを使って説明します。

添付白布なので元々の色はバーの左端の白です。試験をすることで、白布に色移りが生じたとき、その色はこのバーのどのあたりの色が近いかを見て、級数を判定します。

級数のイメージ

水堅ろう度試験を実施するメリット

水堅ろう度は前述したとおり、水に対する染色の耐久性を表しています。

そのため、水堅ろう度が悪いものは、製品が水に濡れるだけで色が変化してしまい外観を損ねたり、水に濡れた状態で他のものと接触することで色移りが生じてしまい、消費者クレームの原因になることがあります。

事前に試験をしておくことで、このようなクレームを未然に防ぐことができるのが水堅ろう度試験を実施するメリットの一つであり、試験を実施する目的であると考えられます。

水堅ろう度試験を実施している検査機関

水堅ろう度試験を実施している代表的な検査機関は下記となります。

  • 一般財団法人 カケンテストセンター
  • 一般財団法人 ボーケン品質評価機構
  • 一般財団法人 ニッセンケン品質評価センター
  • 一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター
  • 一般財団法人 ケケン試験認証センター
  • 一般財団法人 化学物質評価研究機構

まとめ

  • 水堅ろう度は、簡単にいうと水に対する染色の耐久性。
  • 水堅ろう度試験では、変退色と汚染の2つを評価する。
  • 水堅ろう度試験を実施しておくことで、製品が水に濡れるだけで色が変化してしまい外観を損ねたり、水に濡れた状態で他のものと接触することで色移りが生じてしまい、消費者クレームに繋がることを未然に防ぐことができる。

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この記事を書いた人
あたろう

某国立大学院(理系)を修了後、検査機関の職員として勤務。
ニッチで閉鎖的な業界ということもあり、ネット上に情報が少なく不便に感じる。
業界内の人間がそうなのだから、依頼者側からしたら、より分からないことが多いのでは?と考える。
それならば、「自分が調べて学んだ知識」や「調べ方」などのお役立ち情報を提供しようと当サイトを立ち上げる。
当サイトのテーマは「商品テスト(試験、検査)の攻略サイト」である。

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